加納朋子さん短編集『モノネールねこ』を読返してみた感想

お勧めの本紹介
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こんにちは!ベルピピです。

懐かしい本を読み返してみました。

初めて読んだのは10年以上前の大学生の時、本の帯が印象的で買った本。

「まさかこの歳になって、ザリガニの話で泣くなんて思いもしなかった」

ザリガニで感動ってなんだそれ?と思ったけど案の定、相当感動しました。

10年たって読返そうと思うほど、心が動いた作品です。

◆8つの短編

①モノネールねこ
②パズルの中の犬
③マイ・フーリッシュ・アンクル
④シンデレラのお城
⑤セイムタイム・ネクストイヤー
⑥ちょうちょう⑦ポトスの樹
⑧バルタン最後の日

やっぱり僕は特に最後のザリガニの話(バルタン最後の日)が好きです。

40ページの短編でしかもザリガニ視点の話なのに、相当感動しました。

家族の感動的なお話をサクッと読みたい方にお勧めです。

バルタン最後の日の感想 以下ネタバレ含みます

バルタンと名付けられたザリガニがリビングで家族を観察しています。

小学校低学年のフータ、優しいけど気の弱で鈍そうな男の子。他の子によくからかわれています。お父さんはサラリーマンで表面上は明るく振舞っているけど仕事が辛くて疲れている。二人とも家族に心配を掛けないようにしています。専業主婦っぽいちょっと要領が悪そうなお母さんは状況を把握していますが、あえて知らないふりをしています。お互いを思いやっている優しくて不器用な家族です。

バルタンが家に来て間もなく、お母さんはフータの背中についた足跡や、体操着袋の紐が切れていたり、フータがいじめにあっていることに気づきます。徐々に家の中で笑わなくなっていくフータ。仕事が忙しくて家に帰っても寝るだけ状態になっているお父さん。お母さんは学校に相談したり、色々頑張ってはみるものの、ことを大きくしたくない学校側はまじめに受け取ってくれない様子。

状況を打開するために脱皮すると決めるお母さん。とにかく明るくオヤジギャグを言ってみたり、明るくてひょうきんものに変身します。少しでもフータが笑ってくれるように、家族の雰囲気が明るくなるように無理して頑張る姿が切ないです。経緯から見ていたバルタンのセリフ

全然ガラじゃないんだけど。こんなことを想うのは似合わないんだけどさ。知らないってことは残酷だと思った。そしてそれと同じように、知っているってことも残酷だ、と。この家の男二人は知らない。「お母さん」が突然「脱皮」したわけを。なぜそうしなければならなかったかを。

リビングの水槽からこんなことを考えながら家族を見ています。

フータは学校でどんな目にあっているか家族に言わない。お父さんは会社の辛い人間関係を妻に言わない。お母さんは気づているけど言わない。

そんな中、フータがお母さんの真似をしたら1人だけ笑ってくれたことを打ち明けます。勇気を出したフータの姿を想い泣きそうな顔になるお母さん。明日は2人笑ってくれるよと伝えます。交互に見て状況を把握したお父さんはディズニーランドに行こうと誘います。節約すれば大丈夫!なんとかなる!初めてすごく良い笑顔になる家族。イジメを家族に打ち明けられたフータ、無理をしていたお母さんにもう無理しなくていいんだよっと伝えるお父さん。状況が好転していくのを感じます。

フータとお母さんが顔を見合わせて本当に嬉しそうに笑う姿を見たバルタンはこう思う、

俺たちザリガニは、たとえ命より大事なこの両のハサミを失ったとしても、見事再生することができる…脱皮することによって。人間もそうだと良いのに、と思う。傷ついた心とか、無くしかけた自身とか。そういうものが、魔法みたいに簡単に癒えてしまえばいいのに。

バルタンの家族に対する優しい気持ちが分かります。

バルタン最後の日はすぐに訪れます。家族がディズニーランドへ出かけて行った夜に泥棒を撃退するために水槽から出て、ハサミで挟んで振り払われて床に叩きつけられしまう。最後に家族を守るバルタン。どうしてこんなお人好しの家族を狙うんだという心の声が泣かせます。帰ってきた家族はしっかりと状況を理解して、バルタンが守ってくれたことしっかりと理解します。どんなにイジメられても泣かなかったフータが大泣きします。

ザリガニの話に泣かされるなんてって書いてあって身構えて読んでもやはり感動して泣きそうになる。悲しいけど心が温かくなるお話でした。

ザリガニ目線で温かく家族を見つめる感じが新鮮です。

さようなら

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