僕は公共の場で読まないと決めている本がある。それがさくらももこさんのエッセイです。
さくらももこさんのエッセイのすごいのは1文で笑わせてくるところ。淡々とした文章の中に、急に面白い1文が現れるので、びっくりして吹き出してしまう。急にくるのでどうやっても我慢できない。僕はどちらかというと普段は笑わない方だと思うけど、どうしても声に出して笑ってしまう。大学時代に中央線で驚かせてコーヒーこぼしたオジサンには本当に申し訳なかったけど、コントロールできないのでしょうがない。
数あるエッセイの中で今回は「ひとりずもう」を読み返してみた。最後に読んだのは大学時代だから10年くらい前だけど、まったく色あせてなく全体を通して5回も噴き出してしまった。30歳超えて感受性が鈍ってきたと思っていたけれど相変わらず面白かった。
さらに「ひとりずもう」は作家デビューした経緯も書いてあり、さくらももこさんの夢に対する考え方やスタンスは30歳になった自分にもぐっとくるものがありました。実際にぐうたらな生活から漫画家を目指し始めた時の姿はとてもカッコよかったです。最近は子供だった頃ぶりに「ちびまる子ちゃん」を娘と一緒に見るようになったので、あのまるちゃんがこんなに頑張ってという親心も混じります。とにかく楽しく読めました。
■ちびまる子ちゃんのその後の姿が気になる方(初恋や漫画家デビューの経緯あり)
ぜひこんな方に読んでいただきたいです
さくらももこさん「ひとりずもう」の概要と感想 以下ネタバレします
さくらももこさんのエッセイの中でも大人に近い、中学生~高校の終わり頃がテーマになっていて、女子高生になったまるちゃんがどんな感じだったか知ることができます。男子に対する嫌悪感を感じていた中学時代から高校生になって初恋をした時の話やら、くだらないけど笑ってしまうエピソードなどが、さくらももこさんの目線でびっくりするくらい客観的に面白く切り取られている。こういうドライな目線で周囲の人を観察できていたから現実をテーマにした「ちびまる子ちゃん」みたいな漫画が描けたのかなと思う。コジコジがシュールで面白いのも、さくらももこさんのエッセイを読むと人となりが反映されているからだと、納得できる。ちなみに普通にたまちゃんやひろしも出てきてワクワクします。
さらに高校生時代に子供の頃からの夢を実現するために、漫画を描き始めてデビューするまでのまるちゃんの姿はストイックでカッコいい。漫画家なんて無理だと家族親戚に言われても、まったくブレない。もうやめろと言われても、
私は今、自分の人生の夢に挑戦しているのだ。家族はそれぞれ夢があるんだか無いんだか知らないが、私自身の夢とは無関係だ。私の人生は私のものでしかない。私は今、何が何でもこれをやるのだ。
当たり前のように自分と周りとをスパッと切り離して、甘えることなく自分の夢ため邁進していく。
さらにあとがきでは2005年時点のさくらももこさんが、改めて夢について触れていて
よく「夢は願っていれば叶う」とか「思い続けてればきっと叶う」とか言うけれど、私個人としては、人にそんな事をとても言えない。「叶うこともあるかもしれない」か「叶うといいね」がという言葉が精いっぱいだ。
夢をかなえるということがどういうことなのか、情熱だけではどうにもならない、無理かもと感じた時にどうしたらいいか、アドバイスを送っている。シビアだけどかなり温かい言葉で元気をもらいました。僕はすでに若者ではないけれど、毎日をしっかりと積み重ねようと思えました。
まとめ
「ひとりずもう」は中学生時代から高校時代のぐうたらした面白おかしいエピソードから、高校の最後に夢をかなえるために邁進する姿が書いてある。日常のエピソードは噴き出してしまうほど面白くて、まるちゃんが「さくらももこ」になっていく姿は感動的で、芯の強さを感じます。あとがきまで含めて、読み終わった時点ですごく充実感のあるエッセイです。
さくらももこさんが亡くなったニュースは僕の中でかなり衝撃が大きくて、コンビニに車を停めていてしばらく動けないほど悲しかったです。何度読んでも笑わせてくれて、温かい気持ちにもさせてくれるエッセイを大事にしたいと思います。
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