こんにちは!読書が趣味のベルピピです。
『レインツリーの国』を久しぶりに読んでみて面白かったので感想を書かせて頂きます。
『レインツリーの国』を読んだ感想(再読)を紹介
恋愛小説が読みたくて偏屈じゃなければ十中八九面白と思います。
文章は登場人物の想いとか考え方がしっかり「言葉」になっていて分かりやすい。
会話とかメールのやりとりが多くて意味を深読みしたり、解釈に悩むことがほぼなく、
ストレスなく読み切れると思います。
主人公は空気が読めて勘も良いけどストレートで言葉のチョイスにデリカシーが足りない伸行と、難聴で自分に自信がなくて若干、偏屈気味なひとみです。年齢は2人とも20代半ばくらい。
伸行とひとみの視点が切替わり、出来事の反応をそれぞれの視点で理解できます。
ライトな気分でシンプルに20代半ばの恋愛小説が読みたい方、全般にお勧め!
20代半ばの恋愛なので世代によっては合わない可能性はありますが、
ディープさを求めない娯楽として本を読みたい気分の方、ほとんどにお勧めできる小説です。
ストレートでさっぱりした性格の向坂伸行の魅力
初めて読んだときは大学生だったと思いますが、その当時から僕の理想像に近い人物です。
気づいたら年下になっていましたが、今も変わらず伸行を見習いたいところは多いです。
◆伸行の魅力的なところ
ひとみさんが補聴器隠したくてそんなぼったい伸ばしっぱなしの髪にしてるのは分かってるけど、客観的に見たらそんなんしてもなんも良いことないで。どんないい服着ても垢抜けんし、市松人形がムリヤリ洋装着せられてるみたいでちぐはぐやねん。ひとみさん、素材がすごいもったいないことしてるで。
後でさすがに反省しますが、こんな感じではっきり言います。
相手に嫌われることを怖がったり、オブラートな言葉を選んで結局伝わらなかったり、または、相手のためだと思っても面倒を避けるために言葉を飲み込むことは多いです。言葉を選びすぎて伝えたいことが半分も伝わらなかった当時の僕には、デリカシーのないところまで魅力的に感じていました。
相手のためにこれだけはっきりと意見できるのはカッコいいと思います。
もう言うてまうけど、俺ひとみさんのことメールのラリーやってた頃からずっと、顔も知らん頃から好きやったから。待ち合わせ場所にリムドックみたいのが来ても「友達からお願いします」って言えるくらいすきやったから。
リムドックが何か知らなかったけど、言いたいことがすごくよく分かる。
伸行のまっすぐな力強い言葉たちが、少しづつひろみにも刺さっていきます。
ひとみはさっぱりした性格の伸行と比較して自分の偏屈さや弱さが際立って凹みながらも、
少しづつ変わっていきます。自分と本気で向き合い、苦しいですが前進します。
1章 直接会うのはダメやったら、せめて電話だけでもどうかな。~P55
学生時代に読んでいたライトノベルの受け入れがたいラストを自分以外の人はどう受け止めたのだろう?
2人の出会いは、伸行がふと思い出して本の感想を検索するところから始まります。
気になる感想を見つけたブログの名前は「レインツリーの国」、この本の題名でもあります。このブログの管理人がひとみでした。
1章はほとんどメールのラリーで終始します。伸行は文章のセンスや物語のラストに対する感性からどんどんひとみに興味がわいてくる。そしてメールの反応に一喜一憂している自分に驚きます。顔の見えない相手に恋心を抱いていきます。
伸行のワクワク感が伝わってきて、文章を書いてみて行き過ぎたかなと思って無難な文章に修正したり、中学時代の好きな子とのメールのやりとりを思い出しました。それくらいのはしゃぎっぷりです。最後になんとか会う約束を取り付けます。
きっかけになったライトノベルに対する感想は、2人の恋愛のスタンスとして現れてきます。
2章 ・・・重量オーバーだったんですね ~P95
デートの待ち合わせ場所はひとみの提案で、出会うきっかけになったライトノベルの文庫レーベルの棚の前。このセンスに唸る伸行。
ただ、初デートはちょっとした違和感の連発です。
会話はメールでやり取りしていた通りの知的でセンスがあるひとみですが、映画館で洋画の字幕にこだわって後ろで待っていたカップルから「早くしろよ、わがまま」と言われたり、カップルの悪口を一切気にしないでスルーしたり、気になる行動が多いです。
伸行は聡明な会話の内容とひとみの行動が合わなくて混乱します
色々我慢しながらのデートで、最後にエレベーターでブザーが鳴っても降りようとしないひともの態度に伸行は怒ってしまいます。「自分の代わりに誰かおりろみたいなみっともない真似すんなや!」
としかも結構きつい言葉をぶつけます。
ごめんなさいと頭を下げたひとみの耳に補聴器を発見し、違和感の原因を理解します。
そして自分のやらかしたミスに相当に凹みます。
凹みまくって送った告白メールが、リムドックメールです。
願わくば、もう一回君との糸がつながりますように。
改めてデートに誘う伸行ですが、さらっとくさいセリフを送れるのもらしいところです。
3章 傷つけた埋め合わせに自信をもたせてやろうなんて本当に親切で優しくてありがとう ~P143
なっがいタイトル。3章はひとみ視点です。
ひとみはリムドックメールを読みながら、好きという言葉を飲み込めず、結果めちゃ卑屈になってしまいます。八つ当たりに近い「お前なんも分かってねーな的な」メールを送り付けます。
こんなメールに食い下がってこないだろうと思った矢先に即レスがあって、焦ります。こっからケンカして仲直りしようと、前向きな伸行とのやり取りが始まります。ひとみからしたらポジティブおばけ、未知の生物と出会ったような感じでしょうか。
傷つけた埋め合わせに自信をもたせてやろうなんて本当に親切でありがとう。
この言葉が伸行が一番引っかかったひとみの言葉です。伸行はメールに傷つけようとしていた意図があったと指摘しつつも、「傷つけながら自分んの方が傷ついてるのがすごく伝わってきた。」と言ってきます。
ひとみの抱えている周りには理解されないであろうと諦めてしまっていた複雑な感情を、伸行はすごく勘よく理解していきます。家族すら理解してくれない部分まで、サラッと飲み込んで適切な言葉を選んで返事をしてくれる伸行にひとみが惹かれていきます。
4章 ごめんな、君が泣いてくれて気持ちええわ ~P185
なんてひどいこと言うんだ伸行!っていうタイトルです。どのタイミングで言ったんだという気持ちで読み始めました。
メールも頻繁にして、デートも数回こなし付き合ってんのか微妙なラインになっている2人はここで一番大きなケンカをします。伸行視点が途中でひとみに移ります。
きっかけは狭い歩道を歩いているときに後ろから追い越してきたカップルがわざとひとみにぶつかって突き飛ばしたこと。キレた伸行はカップルを猛追して大声でひとみの耳のことを伝えます。
自分の耳のことを言いふらさないで!と伸行に今度はひとみが怒ります。
ここで初めて伸行の悲しい過去が分かります。伸行は自分も100%ひとみの耳のことは理解できない。だけど自分だけが不幸だと思うなと伝えます。ひとみは伸行の悲しい過去に泣いてしまうが、悲しい話をする伸行に自分の姿を見たことで、ひとみを大きく前進させるきっかけになります。
最後の捨て台詞で言ったのがタイトルの言葉でした。
5章 歓喜の国 ~P185
ひとみは伸行との出会いで自分を見つめ直し葛藤して、悩みぬきます。
そしてついに伸行から提案されていた髪を短くするを実行する決心をします。
これは伸行と前向きに生きていくことと同意です。
季節が変わるほどほぼ音信不通で待たされた伸行はなかなか可哀そうでしたが 笑
物語はハッピーエンドに向かいます。
まとめ
最初に書きましたが、ライトな気持ちで娯楽のために恋愛小説を読みたい方は、度合いは違えど大体は楽しいく読めると思います。そこらの少女漫画を読むくらいなら、こっちを読んだ方がキュンとなるんではないかと、30歳男子ですが、お勧めさせていただきます。
特に個人的には最終章のひとみの嫉妬に気づいた伸行の気持ちが一番グッときました。
娘にはこんな恋愛してほしい 笑
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